すべてのライダーが、複合材料の基礎知識を身につけておかなくてはなりませ
ん。カーボンファイバー製の複合素材は強度にすぐれ、軽量ですが、衝突や過度の
負担がかかると、曲がらずに折れてしまいます。
複合素材とは?
「複合素材」とは、部品が種々のコンポーネントや素材で作られていることを
意味する言葉です。「カーボンファイバーバイク」というバイクもありますが、こ
れは実際には「複合素材バイク」の意味です。
カーボンファイバー複合素材は一般的に、プラスチックを母材とする丈夫で軽
い繊維を成型したものです。カーボンファイバー複合素材は金属に比べて軽いのが
特長です。スチールの比重は7.8g/㎝3、チタンは4.5g/㎝3で、アルミニウムは
2.75g/cm3であるのに対して、カーボンファイバー複合素材は1.45g/㎝3という
軽さです。
強度重量比が最も良い複合素材は、エポキシプラスチックを母材とするカーボ
ンファイバーです。エポキシ母材がカーボンファイバーを接合させ、負荷を他のフ
ァイバーに移し、滑らかな表面を作ります。カーボンファイバーは、いわば負荷を
支える「骨組み」なのです。
複合素材を使う理由
金属はどの方向でも性質が同一ですが(専門用語では「等方向性」)、カーボ
ンファイバーの場合は、配置する方向により、特定の負荷に対して構造を最適化す
ることができます。エンジニアにとって、カーボンファイバーを使う場所を選択で
きることは、軽くて強いバイクを作るための強力な手段になるわけです。快適性や
振動減衰などの目的に合わせてファイバーを配置することもできます。
カーボンファイバー複合素材は、耐食性についてもほとんどの金属をはるかに
上回っています。カーボンファイバーやグラスファイバーの船舶もあるほどです。
カーボンファイバーは、強度重量比も非常に高い素材です。
複合素材の限界
適切に設計された「複合素材(カーボンファイバー)」バイクとコンポーネン
トは、従来の金属素材のものよりも疲労寿命が長くなります。
疲労寿命が長いことはカーボンファイバーの長所ですが、カーボンファイバー
のフレーム、フォーク、コンポーネントを定期的に点検しなければならないことに
変わりはありません。
カーボンファイバー複合素材には延性がありません。カーボンファイバーの構
造物に限度を超える負荷がかかると、曲がらずにそのまま折れます。破折部分とそ
の周辺は粗い鋭角を作り、カーボンファイバーまたはその繊維層が剥がれることが
あります。カーボンファイバーの場合、湾曲やねじれ、延びることはありません。
ヒットや衝突でカーボンファイバーのバイクはどうなるか
たとえば、バイクに乗った人が縁石や溝、岩、自動車、他のサイクリストや物
体にぶつかるとしましょう。衝突時のスピードが早足で歩く速さよりも速ければ、
ライダーの身体は前に移動し続け、その勢いで身体はバイクの前方に投げ出されて
しまいます。ライダーの身体が投げ出されるほどですから、フレームやフォーク、
その他のコンポーネントも無傷ではいられません。
カーボンフレームはどうなるでしょうか。これには複雑な要因がいろいろと関
係しますが、衝撃が大きければ、フォークかフレームが完全に破損する可能性が
B.複合素材について
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