ます。このため、ホイールをロックさせずに速度を緩め
たりスムーズに停止したりするための練習をする必要が
あります。プログレッシブブレーキモデュレーション(
漸進的ブレーキ調節)と呼ばれるこのテクニックは、最
適なブレーキ力が発生すると思われる位置までブレーキ
レバーを引くのではなく、レバーを段階的に握り込むこ
とで徐々にブレーキ力を増やしていくテクニックです。
ホイールがロックしはじめたと感じたら、レバーの握り
を少しだけ緩め、ロックアップする直前でホイールの回
転を保ちます。さまざまな速度や場所において両ホイー
ルにどの程度のブレーキレバーの握りが必要か、感覚を
養っておくことが大切です。この感覚をさらに理解する
ためには、バイクを押して歩き、さまざまな力をブレー
キレバーに加えてみて、どの程度でホイールがロックさ
れるか試してみてください。
片方または両方のブレーキをかけるとバイクは減速し
はじめますが、ライダーの身体は減速前のスピードで進も
うとします。このため、フロントホイールへの体重移動が
発生します(もしくは、フロントホイールのハブ付近にブ
レーキによる力がかかりすぎると、身体がハンドルを越え
て前方へ投げ出されてしまうおそれがあります)。
より多くの体重が加わったホイールの場合、ロック直
前には、それだけ多くのブレーキ圧がかかることになり
ます。逆に、加わる体重が少ないと、少ないブレーキ圧
でロックします。そこで、ブレーキをかけて体重が前方
移動するときに、バイクの後方へ身体を移してリアホイ
ールへ体重を移動させる必要があります。これと同時に、
リアブレーキを抑えて、フロントブレーキ力を強める必要
があります。下り坂では体重が前方に移動するため、この
動作がさらに重要になってきます。
効果的な速度制御と安全な停止を実現するための鍵とな
るのが、ホイールのロック制御と体重移動の2点です。ご
利用のバイクがフロントサスペンションフォークを搭載し
ている場合、こうした体重移動がより顕著になります。ブ
レーキがかかるとフロントサスペンションが沈み込み、体
重移動が大きくなります(セクション4.Fを参照)。ブレ
ーキや体重移動の練習は、車などの往来や、危険物や障害
物のない場所で行ってください。
未舗装の道路上や雨天でバイクに乗る場合は、ブレー
キの条件も全く異なります。未舗装の道路上や雨天の場
合、バイクが停止するまでの時間は長くなります。タイ
ヤのグリップが低下するため、コーナリング時やブレー
キ時のホイールのトラクションも減少してしまい、ブレ
ーキ力が少ない場合でもホイールがロックする可能性が
あります。また、ブレーキシューに水滴やホコリが付着
すると、グリップ力が低下します。未舗装の道路や濡れ
た路面でブレーキ制御を保持するには、普段よりも速度
を抑えて走行してください。
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